この空間には骨がある。
もちろん、どんな空間にも骨格となる構造はあるが、このオフィスにおいてはそのニュアンスがちょっと違う。
イタリアのシチリア島北西部に位置する都市・パレルモにある、歴史ある倉庫をリノベーションしたダイナミックなこのオフィス。トップライトから光が注ぐ健やかな空間は、その天井の高さを活かした2段構成で、透明性の高いガラス張りの個室の前に、キャットウォークのような通路をぐるりと配したユニークで風通しの良い構成だ。
「ちょっと打ち合わせしたいからこっち来れる?」
そんな風に異なるフロアに居ながら気軽にコミュニケーションが取れるのは、この空間ならではの魅力だろう。
中でも注目すべきは、三角屋根を支えるダイナミックな骨組み。歴史ある建物らしい年季の入った木梁に見惚れてしてしまいそうだが、頭上を水平に横切る木梁の先を追っていくと、ガラス張りの個室を支える構造梁になっているのだ。
建物が積み重ねてきた時間に敬意を払い、既存の構造体をインテリアの骨格として再利用したこのオフィス。過去と現在を調和させた骨のある試みは、リノベーションにおけるお手本とも言える事例の1つだろう。
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